リハビリテーション科
作業療法(OT)とは?
精神障害の方に対するリハビリテーション治療のひとつです。
個別あるいは他の人たちとの関わりの中で、さまざまな作業活動を利用し、病気からの回復を促します。ご本人の想いに寄り添いながら、その人にとってその人らしくより良い生活が送れるように支援します。
作業療法(OT)の目的
リハビリテーションプログラム
長い歴史の中で当院の作業療法は形を変えて来ました。現在は自分自身や病気について学び対処や能力を身につけるプログラムなど、疾患や治療目的別に様々な活動を行っています。その中でも人との関わりの中で、その人にとっての楽しみや生きがいとなる作業を通して回復する力を養っていくことは、当院作業療法が変わらず大事にしている一面です。
1.病気や対処方法について学ぶグループ
グループで実施していくことで、同じ悩みを共有することが出来、お互いのアイデアを出し合い、その病気特有の悩みへの対処法について学ぶことが出来ます。疾患ごとに病気について学習するグループと、対処法については疾患を問わず参加出来るグループが有ります。
疾患ごとのグループ
- 気分障害の心理教育(すずらんグループ)詳しい内容はこちら
- うつ病の認知行動療法 (すいせんCBGT)詳しい内容はこちら
- 発達障害の認知行動療法(大人のADHDのセルフマネジメント会)詳しい内容はこちら
- 統合失調症の心理教育(たんぽぽグループ)詳しい内容はこちら
- アルコール依存症の治療ミーティング(Zeroの会)詳しい内容はこちら
- 薬物依存症の治療ミーティング(D-MARPP)詳しい内容はこちら
疾患に限らず参加できるグループ
- WRAP(ラップ)詳しい内容はこちら
2.退院にむけての準備を行うグループ
一人暮らしや施設での生活に必要な能力を学んでいくグループです。一人では難しいことも、他の人と一緒になら助け合いつつ行えます。
料理グループ(おはし会)
対象:料理の経験が少ない方、ブランクがあり自信がない方、将来に向けて基本的な調理を身に付けたい方
内容:簡単なメニューやレトルトを使った調理を一人一人行います。栄養士さんによる献立のアドバイスも受けられます。
SST:Social Skills Trainig(わかば会)
対象:対人緊張が強い・上手く話しがまとまらない・自分から話しかけられないなど、コミュニケーションを苦手と感じている方
内容:対人関係改善のためのグループセッション・コミュニケーションスキルの訓練
3.余暇的活動グループ
他の患者さんと場を共有しながら、様々な作業の中から自分の目標や目的に合った作業を選択できます。新しい作業にチャレンジしたり、退院後もできる趣味、生きがいを見つける時間にもなります。楽しみながら手先や体を動かす時間は、生活リズムを整え、体力や認知機能の維持、向上につながります。
個別OT(アクティビティや軽運動)
内容:革細工、陶芸、ミサンガ、ビーズ細工、編み物、手芸、脳トレプリント、エアロバイク、ヨガなど
音楽療法
音楽療法士によるサックスやピアノ演奏を行っています。
歌いたい、聴きたい曲があればリクエストに応じます。毎回大人気の活動です。
スポーツ活動
卓球・バトミントン・ソフトバレー、キックベースなどを体育館で実施しています。気分転換、体力維持に役立ちます。
ヨガ・チェアヨガ
有資格者スタッフが中心にその人のレベルに合わせ実施しています。病棟内では高齢者でもできる、椅子を使ったヨガも人気です。
4.その他季節行事・ボランティアコンサート
病棟レクリエーションや年間季節行事も実施しています。また、地域の方々と交流が出来る機会として、秋祭りやゴスペルコンサートなど一般の方も参加いただけるイベントも行っております。
秋祭り
毎年10月に実施しています。地域のボランティアによるステージ出し物や抽選会があり、模擬店や作業所バザーなどが所せましと並びます。一般の方も参加可能です。
春の文化祭
毎年5月に実施、その日の会場来場者による投票で優秀作品は表彰されます。病棟ごとの共同作品、個人作品コーナーがあり、活動などで作り上げた力作の作品が並びます。
もちつき大会他、季節のレクリエーション
冬の風物詩として年始に実施しています。その他、お花見や焼き芋会など季節行事を病棟ごとに行っています。
地域ボランティアによるゴスペルコンサート
コーラスやリコーダー演奏などのボランティアコンサート等を通して、定期的に地域との交流の機会を設けています。慰問活動をして下さるグループも募集中ですので、是非ご相談下さい。
プロのゴスペルグループによるコンサート
毎年2月にGIFTSというプロのゴスペルグループをお招きしています。一般の方も参加可能です。開催日についてはホームページでお知らせします。
また当院に通院中の方は、外来プログラムの見学参加も可能です。お気軽にお問合せ下さい。
今月の外来プログラム予定についてはこちら
歴史ある太宰府病院の”作業療法”
岩田 太郎
当院の作業療法は1940年(昭和15年)9月、第2代院長の岩田太郎により開始されました。
岩田は着任してすぐに患者の全身健康状態がひどく低劣な状態にあるのを見て「たとえ心は病むとも、身体までは病ませてはならない」として直ちに健康調査を行い、閉鎖的な生活とそれに伴う運動不足の解消として農作業を中心とした作業療法を開始しました。
岩田は作業療法について以下のように言っています。
「一時的な衝撃的諸方法よりは、持久的にして根底にある体験療法によって、病根たる性向の転換を期する方が抜本塞源的であると信ずるから、むしろ作業療法を分裂病治療の根幹とし、他の諸法をその準備乃至昼間補助手段として利用する体系を現在の課題として居る」
当時の治療手段に抗精神病薬はなく、インシュリンショック療法や電気ショック療法などのショック療法が中心だった時代です。岩田はショック療法が期待していたような持久的効果が得にくいことから、作業療法を治療の中心とした方が有意義だと考えていました。
作業療法の効果について岩田は、
「単なる注意の転向、気分の転換のみに止まらず、自閉性の打破、思考の調整、感情の賦活、意志の矯正並びに鼓舞の強靭なる諸作用を具有するもの」
当時の職業は農家が中心であり、自給自足していた時代です。農作業を作業療法の中心としたのは、農作業こそ人が生きていく上で最も根源的な活動であり、それを通して患者の人格の根底から賦活していくことができると考えていたからです。後々には地域の農家へ手伝いに行ける患者もいて、地域に根差した病院作りと作業療法による職業リハビリテーションが当時から実践されていました。地域住民からは、患者の生真面目な作業振りを見直し、患者理解を深める一助にもなったそうです。
岩田院長のコメント(新聞記事から)
「監禁治療時代はとっくの昔語りとなった。これでは患者は快くなるわけはない。〝錬成″ということがどんなに大きな力があるか沁々分かる。土地と患者は切離して考えることは出来ない。不治といわれていた早発性痴呆症でも完治に癒るのだから私はこの方法でなければ駄目だと確信している。」
「東の松沢、西の筑紫(太宰府)」と言われ、「作業療法が精神病治療に大きな光明を投げかけている」と新聞に取り上げられるような特徴的治療活動となっていた。